便秘と下痢の関係
便秘と下痢は、消化器系の健康において非常に重要な症状であり、互いに関連していると言われています。便秘は一般的に腸の運動が遅くなり、便が硬くなって排便が困難になる状態を指します。週に3回未満の排便・便が硬い・排便時に痛みを伴う場合には、便秘の可能性が高いです。一方、下痢は腸の運動が異常に速くなり、便が水っぽくなる状態を指します。下痢は、通常1日に3回以上の排便があり、便が水分を多く含む状態をいいます。
この二つの症状は、腸内環境の乱れやストレス、食生活の影響などによって相互に作用することがあります。例えば、便秘が続くことで腸内に便がたまり、腸が過剰に働くことで便の一部が水分を含んだ状態で排出されることがあります。また、逆に下痢が続くことで腸の動きが不規則になり、結果として便秘が引き起こされることもあります。
腸は非常に複雑な臓器であり、腸の動きは神経、ホルモン、腸内フローラ(腸内の微生物バランス)によって調整されています。これらの要因が相互に作用することで、便秘や下痢といった症状が生じると言われています。
便秘と下痢の原因
便秘と下痢の原因は多岐にわたります。
①食生活の影響
- 食物繊維の不足: 食物繊維は便のかさを増し、腸の動きを促進すると言われています。食物繊維が不足すると便秘を引き起こす可能性があります。
- 水分摂取の不足: 水分が不足すると便が硬くなり、排便が困難になります。逆に下痢の場合は、腸が水分を吸収しきれず、便が水っぽくなります。
- 高脂肪食や加工食品の摂取: 脂肪分の多い食事や加工食品は、腸の動きを鈍らせ、便秘を引き起こすことがあります。また、これらの食品は腸内環境を悪化させ、下痢を引き起こす要因にもなります。
②ストレスとメンタルヘルス
ストレスは腸の働きに大きな影響を与えます。心理的なストレスや緊張が腸の運動を鈍らせ、便秘を引き起こすことがあります。また、急性のストレスは下痢を引き起こすことがあるため、心と体の健康は密接に関連しています。
③薬剤の影響
- 一部の薬剤(例: 鎮痛剤や抗うつ薬)は、腸の動きを抑制し、便秘を引き起こすことがあります。特に、鎮痛剤は腸の運動を大幅に減少させるため、便秘を招くことが知られています。また、抗生物質は腸内フローラのバランスを崩し、下痢を引き起こすことがあります。抗生物質によって善玉菌が減少し、病原菌が優勢になることで腸の不調が生じると言われています。
便秘が引き起こす下痢
便秘が続くと、腸内に便がたまり、通常の排便が難しくなります。この状態では、腸が過剰に働き、便の一部が水分を含んだ状態で排出されることがあります。
便が硬くなることで腸壁が刺激され、便が移動する際に水分が追加されるため、結果的に水っぽい便が排出されることになります。
便秘が慢性化すると、腸内の環境が悪化し、炎症が生じる可能性があります。炎症が進行すると、腸内のバランスが崩れ、正常な腸の動きが妨げられ、下痢の発症リスクが高まります。また、便秘に伴う腹部の膨満感や痛みがストレスを引き起こし、さらなる腸の不調を招く悪循環に陥ることがあります。
下痢が引き起こす便秘
下痢が続くと、腸の運動が不規則になり、腸内の水分吸収が過剰になることがあります。この状態では、腸の動きが鈍くなり、便が腸内で長時間留まることが多くなります。その結果、便が硬くなり、慢性的な便秘が引き起こされることがあります。
また、下痢後に腸内が正常なバランスを取り戻すまで時間がかかるため、便秘に悩まされることもあります。特に、下痢の原因が感染症や食事による場合、その後の腸の回復には時間がかかることがあります。腸内フローラが正常に戻るまでの過程で、便秘と下痢が交互に現れることも少なくありません。
便秘と下痢は、互いに影響を与える複雑な関係にあり、腸内環境や食生活、ストレス、薬剤の使用などが関与しています。便秘と下痢の両方の症状が同時に現れることがあります。
過敏性腸症候群(IBS)と
便秘・下痢の関係
過敏性腸症候群(IBS)は、腸の機能に異常があるにもかかわらず、器質的な疾患が認められない状態を指します。過敏性腸症候群(IBS)は、主に腹痛、腹部の不快感、便秘または下痢などの症状を特徴とし、腸の運動に関連する障害が関与しています。
IBSのタイプ
IBSにはいくつかのタイプがあり、主に以下の3つに分類されます。
- IBS-D(下痢型): 主に下痢が頻発し、水分を多く含む便が排出されるタイプ
- IBS-C(便秘型): 主に便秘が続き、硬い便が排出されるタイプ
- IBS-M(混合型): 下痢と便秘が交互に現れるタイプ
IBS-Dと下痢の関係
IBS-D(下痢型)の場合、腸の運動が過剰になり、便が正常に形成されずに水分を多く含んだ状態で排出されることがあります。ストレスや食事、特定の食材(乳製品や脂肪分の多い食品など)が引き金となることが多く、急な腹痛や下痢が発生することがあります。
IBS-Cと便秘の関係
IBS-C(便秘型)では、腸の動きが遅くなり、便が腸内で長時間留まることで便秘が生じます。これにより、便が硬くなり、排便が困難になることがあります。IBSの患者は、腹痛や膨満感とともに、排便後に症状が改善されることがよくありますが、便秘が続くことで生活の質が低下するとも言われています。
便秘の検査方法
便秘症状がある場合には、便秘の原因を正しく診断することが重要となります。そのため、医師の判断で大腸カメラ検査をおすすめする場合がございます。大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査)によって、便秘の原因を正しく診断し、適切な治療を行うことが重要です。
大腸カメラ検査
大腸カメラ(大腸内視鏡検査)とは、大腸の内部を直接観察する検査です。スコープをお尻から挿入し、大腸をリアルタイムに診断することが可能です。大腸カメラ検査により、便秘の原因、大腸ポリープ、大腸がん、炎症性腸疾患などの診断が可能となります。
便秘の検査
〜内視鏡検査の特徴〜
- 内視鏡専門医による大腸カメラ検査
- 鎮静剤を用いた眠ってできる大腸カメラ検査
- 大腸検査中の日帰り大腸ポリープ切除
- 内視鏡検査後のリカバリースペース完備
- 最上位機種オリンパス「EVIS X1」内視鏡システムを導入
- ハイビジョン大型モニターの設置
- 個室の院内下剤ブースの完備
- 早朝の大腸カメラ検査にも対応
- 土曜日・日曜日の大腸内視鏡検査
- 大腸カメラ・胃カメラ検査の同日実施
- 感染対策のための消毒・洗浄の徹底
便秘による下痢でお悩みの方へ
便秘に伴う下痢が続く場合には、お近くの消化器内科医に相談することをお勧めしております。便秘を伴う下痢などがある方は、重篤な消化器疾患である可能性もございます。些細な症状でも便秘や下痢でお困りの方は、大阪府大阪市北区梅田にある大阪梅田駅前 ゆう内視鏡内科クリニック HEP NAVIO 院までお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
当クリニックでは、消化器疾患および内視鏡検査・治療を中心として、患者様一人ひとりの健康を第一に考えた丁寧で安全かつ高精度な診療を目指して参ります。内視鏡検査は胃がんや大腸がんの早期発見や治療に非常に有効な手段であり、当院では消化器がんによる死亡をゼロにすることをモットーに、がんの早期発見・治療に尽力して参ります。当院では最新の医療技術と設備を駆使して、安全かつ快適な環境の中で眠りながら苦痛なく楽に受けられる検査をご提供できるように努めて参ります。
院長 川井 祐弥
学歴
- 平成21年3月
大阪府私立大阪星光学院高等学校
卒業 - 平成27年3月
奈良県立医科大学医学部医学科
卒業
職歴
- 平成27年4月
大阪市立総合医療センター入職 - 平成29年4月
医学研究所北野病院入職 - 令和5年10月
大阪梅田駅前ゆう内視鏡内科クリニック HEP NAVIO院 開業
資格
- 日本内科学会 内科認定医
- 日本消化器内視鏡学会 内視鏡専門医
所属学会
- 日本内科学会
- 日本消化器病学会
- 日本消化器内視鏡学会