便秘とは?
便秘は、排便の頻度が減少し、排便が困難または不快になる状態を指します。一般的に、健康な人の排便回数は1日1~3回から週に3回程度とされます。しかし、これを下回る場合や排便時に強い苦痛を伴う場合、便秘と考えられます。
便秘にはさまざまな種類があります。以下は代表的な3つの便秘です。
- 機能性便秘: 食生活や生活習慣の乱れによるもので、最も一般的です。
- 器質性便秘: 腸そのものに病気や障害がある場合に起こります。腸閉塞や腸の癒着が原因になることがあります。
- 薬剤性便秘: 一部の医薬品が原因で腸の働きが抑えられ、便秘になる場合です。
便秘は一時的な問題と思われがちですが、慢性化すると身体全体に深刻な影響を与える可能性があるため、早めの対処が必要です。
便秘が続くとどんな影響が?
便秘が続くと、身体的および精神的な負担が増していきます。ここでは具体的な影響について詳しく説明します。
1. 身体的な影響
腸内環境の悪化
便が長時間腸内にとどまることで、有害なガスや毒素が生成されます。これが腸壁を傷つけるだけでなく、体内に吸収されることで全身に影響を及ぼします。腸内細菌のバランスが崩れると、免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなります。
肌への悪影響
便秘の毒素が体内で再吸収されると、肌荒れや吹き出物の原因になります。特に女性の場合、ホルモンバランスも影響を受けやすく、肌トラブルが深刻化することがあります。
消化不良と体重増加
便秘が続くと腸の動きが低下し、消化不良を引き起こします。また、腸に溜まった老廃物のせいで下腹部が張り、体重が増えたように感じることがあります。
2. 精神的な影響
ストレスの増加
便秘が続くことで、日常生活に支障をきたすストレスが増します。「お腹が張って苦しい」「トイレに長時間こもる」などの状況が精神的な負担となり、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を促進します。
睡眠の質の低下
便秘に伴う不快感やストレスが睡眠の質を下げる場合があります。夜間に腹部の張りやガスによる痛みが原因で眠りが浅くなり、疲労感が蓄積します。
便秘を放置するリスク
1. 慢性便秘への進行
便秘が数週間から数か月、さらには年単位で続くと「慢性便秘」になってしまうことがあります。慢性便秘は腸の働きが全体的に低下し、自力で排便することが難しくなる状態です。この状態では、排便をするために強い力みが必要となり、次のような悪影響が現れてきます。
肛門の損傷
強い力みで肛門に負担がかかり、裂けてしまう(裂肛)ことがあります。
痔疾患の悪化
便秘は痔の原因としても知られており、痔核(いぼ痔)や痔瘻(じろう)が悪化する可能性があります。
慢性便秘が進行すると、排便がスムーズにいかないことへのストレスが日常生活に支障をきたす要因にもなります。
2. 腸閉塞や憩室炎の発症
便が腸内に長期間溜まり続けると、腸の中での圧力が高まります。これにより、以下のような深刻な症状が発生することがあります。
腸閉塞(イレウス)
腸閉塞は腸の一部が詰まり、食べ物や便が通過できなくなる状態です。腸が完全に詰まると、激しい腹痛、嘔吐、腹部膨満などの症状が現れます。放置すると腸が壊死する恐れがあり、緊急手術が必要になる場合もあります。
憩室炎
腸の内壁に小さな袋状の構造(憩室)が形成され、そこに便や細菌が溜まることで炎症を起こす病気です。軽症では腹痛や発熱、重症になると腸の破裂や腹膜炎を引き起こすリスクがあります。
これらの状態は放置するほど治療が難しくなり、治療後も再発する可能性が高いため、早期の対応が重要です。
3. 大腸がんリスクの増加
便秘を長期間放置することが大腸がんのリスク要因となる可能性があることが指摘されています。便が腸内に滞留する時間が長くなると、発がん性物質が腸壁に触れる機会が増え、腸細胞がダメージを受けることがあります。以下の症状が伴う場合は、早めに医師に相談してください。
- 血便や黒い便が出る。
- 急激な体重減少がある。
- 腹部の強い痛みが続く。
特に中高年の方や大腸がんの家族歴がある方は、定期的な検査を受けることが推奨されます。
4. 腸内環境の悪化と全身への影響
便秘が続くと腸内環境が悪化し、有害物質が腸内に蓄積します。これが全身の健康に影響を及ぼす原因となります。以下のような影響が報告されています。
有害物質の再吸収
腸内に留まった老廃物から毒素が再吸収され、肝臓や腎臓に負担がかかります。これが体全体の倦怠感や集中力の低下を引き起こします。
慢性的な炎症
腸内の炎症が慢性化すると、心血管疾患や糖尿病などの生活習慣病のリスクが高まることがあります。
肌荒れと免疫力低下
腸内環境が乱れると、肌のトラブル(吹き出物やくすみ)や免疫力低下が顕著になります。風邪をひきやすくなる、体調を崩しやすくなるといった影響も見られることがあります。
5. 精神的な負担の増加
便秘は身体だけでなく、精神的な健康にも悪影響を及ぼします。以下はその一例です。
慢性的なストレス
「トイレでの時間が長引く」「腹部の張りが気になる」といった状況が日常生活の質を低下させます。
不安感やうつ症状
長引く便秘が「何か重大な病気ではないか」といった不安感を増大させ、精神的な負担を増す場合があります。
社会生活への影響
腹部の不快感が原因で仕事や人付き合いに支障をきたすケースもあります。
6. 高齢者や妊娠中の女性に特有のリスク
高齢者の場合、便秘が進行すると腸の動きが著しく低下し、排便が完全に困難になる「弛緩性便秘」に陥るリスクがあります。また、骨粗しょう症や運動機能の低下に伴い、便秘が転倒や骨折のリスク要因となることもあります。
妊娠中の女性はホルモンバランスの変化や胎児の圧迫によって便秘になりやすい傾向があります。便秘を放置すると、妊娠高血圧症候群や痔疾患を引き起こすリスクが高まります。
自宅でできる便秘対策
便秘は生活習慣を見直すことで大幅に改善する場合があります。以下は自宅で簡単に始められる対策です。
1. 食事の改善
水分を十分に摂取
毎日1.5~2リットルの水を摂取することを目指しましょう。特に朝起きてすぐにコップ1杯の水を飲むことで腸が刺激され、排便がスムーズになる場合があります。
2. 食物繊維を積極的に摂取
野菜、果物、全粒穀物、豆類に含まれる食物繊維は、腸内環境を整え、便を柔らかくする効果があります。便秘に特に効果的な食品には以下のものがあります。
- プルーン
- キウイフルーツ
- さつまいも
- ヨーグルト
3. オリゴ糖や発酵食品を摂取
腸内の善玉菌を増やすオリゴ糖や納豆、味噌、漬物などの発酵食品を取り入れると効果的です。
4. 適度な運動
運動は腸の蠕動運動を促進します。特におすすめの運動は以下の通りです。
ウォーキング
1日30分以上のウォーキングで腸を刺激します。
消化器専門医を
受診するべきタイミング
便秘が自宅での対策では改善しない場合や、以下のような症状が見られる場合は専門医を受診してください。
- 排便時に血が混じる。
- 腹痛や嘔吐を伴う。
- 体重が急激に減少する。
- 市販薬を使用しても効果がない。
消化器の専門医は問診や検査を通じて適切な治療法を選ぶことができます。治療には薬物療法、食事指導、必要に応じた外科的治療などが挙げられます。
この記事の監修者
当クリニックでは、消化器疾患および内視鏡検査・治療を中心として、患者様一人ひとりの健康を第一に考えた丁寧で安全かつ高精度な診療を目指して参ります。内視鏡検査は胃がんや大腸がんの早期発見や治療に非常に有効な手段であり、当院では消化器がんによる死亡をゼロにすることをモットーに、がんの早期発見・治療に尽力して参ります。当院では最新の医療技術と設備を駆使して、安全かつ快適な環境の中で眠りながら苦痛なく楽に受けられる検査をご提供できるように努めて参ります。
院長 川井 祐弥
学歴
- 平成21年3月
大阪府私立大阪星光学院高等学校
卒業 - 平成27年3月
奈良県立医科大学医学部医学科
卒業
職歴
- 平成27年4月
大阪市立総合医療センター入職 - 平成29年4月
医学研究所北野病院入職 - 令和5年10月
大阪梅田駅前ゆう内視鏡内科クリニック HEP NAVIO院 開業
資格
- 日本内科学会 内科認定医
- 日本消化器内視鏡学会 内視鏡専門医
所属学会
- 日本内科学会
- 日本消化器病学会
- 日本消化器内視鏡学会